《MUMEI》
甘党
私は、雅彦が運んできたコーヒーを飲もうとしたが、雅彦のカップの中身を見て、手が止まった。


「雅彦、ブラック飲めたっけ?」


「…実はさ」


雅彦が、私に耳打ちした。

「この外見で、甘党じゃおかしいから、俺、甘いもの駄目で無口なクールキャラで通ってるんだよね」


「全然違うじゃん」


私は小声で反論した。


「うん。でもさ、俺、蝶子ちゃんは大丈夫だけど、女の子と話すの緊張するし、他の三人みたいに営業スマイルできないから、無口なクールキャラは有り難いんだよね」


「そういえば、雅彦、昔からそうだったよね」


私は雅彦と、保育園から中学校まで、同じクラスだった。


雅彦は、毎日男友達と暗くなるまで野球やサッカーをして遊んでいた。


普通、スポーツができる男子はモテるものだが、当時の雅彦は、丸坊主でどちらかと言えば小柄な少年だったから、あまり女子に相手にされなかった。


それに、雅彦は口下手で、内気な性格だったから、自分から女子に話しかけようとはしなかった。


そんな雅彦の唯一の女友達が、私だった。


この辺りで私と同い年なのは、雅彦だけだったから、私達は自然と仲良しになっていた。

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