《MUMEI》

「じゃ、よろしくー」

二人はさっさといなくなった。

「あれ友達?」

離れてた卜部先輩がいつの間にか背後にいた。

「は……あっ!」

上からプリントを引ったくられた。

「……何も書いてねーじゃん。」

白紙のプリント二枚をひらつかせる。

「いいんです!返してください!」

「いい訳あるか!
ヤイちゃんちっともそんな顔してない!
行くぞ!」

先輩に手を引かれ廊下に出る。

「チクショー見当たらない 何処だ!」

俺の意思なんか気にせずに二人を探す。

「……あの、多分教室に」

「何処の!」

勢いよく振り向かれた。

「……一年の」

先輩の握力は強いけど、嫌いじゃない。

教室にやっぱり二人はいた。

「おーい!一年、忘れ物したぞー!」

ずかずか入る。勢い任せな人だ。

「はい?」

「はい?、じゃないよプリント何も書いてないし。

ヤイちゃんは美術部予備軍だからお前らみたいに教室でダベってる暇はねーの!手を煩わせるな。
プリント提出くらいテメーでやれ!!」

先輩はどうしてそんなに口から言葉がすらすら出てくるんだろうか。

どれもこれも俺が言いたかった言葉だ。

「そういう事で!」

呆気に取られた二人を背に俺の手を引いて教室を出て行った。

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