《MUMEI》
*迷惑*
「‥!?」

紫堂を追い屋敷へ戻った瑠果は、食堂の奥にある調理場を覗いて絶句した。

だが、しばらくしてようやく声を絞り出した。

「な‥何をしているのだ紫堂!?」

「ご覧の通りです。性能を確認しておこうと思いまして」

「何ゆえ鍋をカチ鳴らす?‥そして何ゆえコンロに炎を」

「ちゃんと機能しているようですね」

「あ、当たり前だっ。私は毎日ここで料理をしてきたのだから」

「お嬢様がお料理をされてたのですか?」

「そうだが」

瑠果が膨れっ面をして答えると、紫堂は言った。

「では、今日からは僕がお嬢様にお料理をお作りしましょう」

「な‥お前に世話などしてもらうなどまっぴらごめんだッ」

「ご遠慮はいりませんよ、お嬢様」

その言葉と共に見せた涼やかな紫堂の笑みに、瑠果が身震いしたのは言うまでもない。

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