《MUMEI》
休みの申請
事務作業をしていると後ろから大西課長に呼ばれた。


「佐藤さん、ちょっといいかしら?」


私の上司である大西課長はとても魅力的な女性で、三十代後半になっても独身でいることを誰もが不思議がっていた。


「シフトの件なんだけど、新人だからって遠慮せずに土日も休みの申請をしてもいいのよ」


大西課長が察している通り私は先輩たちに遠慮して、毎月平日に休みを申請していた。


「でも土日は忙しいし…良いんでしょうか…」


気にかけてもらえたことは嬉しかったが、すぐに休みを申請して良いものか躊躇した。


「いいの!他の子も佐藤さんのことを心配してるし、来月はどこかで土日を休みなさい」


半ば命令のように言われたが、その方が私が休みやすいと思ってのことだと分かった。


「気を配って頂いてありがとうございます。じゃぁお言葉に甘えて…」


「当然の権利なんだから来月も遠慮せずに申請するのよ。みんなで交代で休めばいいんだから。じゃ、シフトを書き換えておくわ!」


そう言って大西課長は自分の席に戻っていった。

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