《MUMEI》
制服
「おまえ、制服は?」

二学期の始業式。

私は職員室で待たされていた。名波先生は手際良く、出席簿やプリントを用意している。

「買えませんでした。」
前の学校の制服のままだった私に、先生はちらりとこちらを見て、少し渋い顔をした。

「なんだか第一印象と違うな。広崎は。」
「・・・本当のこと言えって言われましたので。」

私はニヒルに笑って見せた。先生は出席簿で私の頭を軽くたたき、
「有望だな。」
と、職員室を出た。
『行くぞ』の合図だったらしい。

またあの長い廊下を歩いていた。

百花の話しを聞いたせいか、この人を少し信用しても良いかな。と思っていた。

「先生って何歳?」
「何歳に見える?」

「大人ってすぐそうやって聞き返しますよね?」
「だってもし若く言われたら、嬉しいだろ?」

先生も何だか初めて会った日より、優しい顔をしているような気がする。

「そんなもんかな?じゃあ20歳!どう?」
有り得ない歳を言ってみる。
「ばーか。どんだけ頭良かったら20歳で大学出れんだよ。」
「あれ?喜ぶかと思って。ダメでした?」

先生はあの優しい顔のまま笑った。目尻にシワがたまってるカワイイ笑顔だった。

そんな顔するんだ・・・

なんだか胸が痛かった。

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