《MUMEI》
歓迎会
それなのに。


「こんばんは〜!」


「いらっしゃい。今日は、皆揃ってるのね」


「うん! 明日休みだし!今夜は飲むからよろしくね!」


ご機嫌な俊彦を先頭に、仕事を終えた『シューズクラブ』の店員四人が『クローバー』に来店したのだ。


四人はカウンター席に横一列に並んで座った。


(四人だったら、テーブル席に座りなさいよ)


私は厨房で舌打ちした。


できるだけ、四人の死角になる位置をキープする。


「ご注文は?」


「蝶子ちゃんで!」


「うちは、そういう店じゃないからね。

馬鹿言ってないで、何にするの?」


咲子さんはサラリと俊彦の言葉を流した。


「いやいや、実は、蝶子ちゃんの歓迎会をやろうと思ってさ」


俊彦は、笑いながら話を続けた。


(余計なお世話!)


私は仕事をさせて欲しかった。


「四人で?」


咲子さんの質問に、俊彦は首を横に振った。


その時。


カランカラン!


勢いよく、入口の扉が開いた。


「こんばんは〜」

「俊彦〜、来たぞ!」

「蝶子は?」

先頭の三人組を筆頭に、賑やかな沢山の声が、店内に響く。


「まさか…」


(まさか)

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