《MUMEI》

「28歳だよ。」
意外と歳ってて、驚いた。私たちの倍の年数生きてるんだ・・・。


先生は教室のドアをゆっくり開いた。それと同時に皆が一斉に立ち上がる。
号令に合わせてお辞儀をし、着席した。

「おはよう。突然だけど本日から新しいメンバーがこのクラスに加わります。」
教室中の視線が私に集まる。少しざわつく。
私はそのザワザワに負けないように、
「広崎奏です。」
と声を張り上げた。
窓際の後ろの席に座る、百花と目が合った。
胸の前でグーをしている。『頑張って』の合図だ。

私は軽く頷いて、挨拶を続ける。
「隣町のS女子学院から転校して来ました。父の会社が倒産し、私立の学校にいられなくなってしまい、こんな時期ですが、こちらに来ました。だから制服も買えません。ですが皆さんの仲間として頑張っていきたいと思っています。よろしくお願いします。」
私は深々とお辞儀をした。
息継ぎを忘れ、一気に話し切った。

教室は一瞬のうちに静まり返った。

数秒後顔を上げると私の後ろからパチパチという音が聞こえる。
それにつられて、前からもパチパチが徐々に大きな音になりながら聞こえてきた。

私はいちばん最初にパチパチが聞こえた方に振り返る。
「よく出来ました。」

先生は私にだけ聞こえる声で、呟いた・・・。

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