《MUMEI》

「席は、窓側後ろから二番目の杉田の隣に。」

その席は百花の前の席で、そんなことでも先生の優しさが伝わる。


「素敵な挨拶だった。」
ホームルームが終わりすぐさま声をかけてきたのは、隣の席の男子だった。
「あ、ありがとう。」
「僕は杉田康弘といいます。よろしくね。」

王子様系の美少年といった感じだった。眩しい笑顔に戸惑っていると
「奏。頑張ったね。」
後ろから百花に声をかけられた。
百花は私の手をとって微笑む。私は少し誇らしげに頷いた。
「あれ?松島さんと知り合いなの?」
「うん。小学校が一緒で・・・」
百花は伏し目がちに答えた。
「そっか。じゃあ心強いね。広崎さん。」
また眩しい笑顔を向けられた。杉田くんの方が名波先生より、よっぽど紳士的な発言だと思った。
でも・・・なんだか掴みどころなくて、表情で考えてることが解りづらい人だと思った。
「もし良かったら校内案内するよ。」
「あ、でも・・・。」

「私も行くよ。」

そう言ったのは、杉田くんの斜め後ろに座る、少しボーイシュな女の子だった。

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