《MUMEI》 しかたなく、私は体操着のまま教室へ戻る。 機嫌悪そうに、名波先生は教壇の上に肘をついていた。男子はほぼ全員席についている。 「女子はお着替えに時間がかかりますね。」 嫌味を一言いい、ホームルームが始まった。 学校からの連絡事項を話している時に、ふと先生と目が合う。明らかに怪訝な顔をした。 目で「おまえ制服は?」と言われたようだった。 「文化祭実行委員の斉藤と広崎はホームルーム終了後視聴覚室へ。以上。」 ホームルームが終わり、席を立とうとする私を、百花と光は心配そうに見ている。汗が引いて少し寒い。 「広崎。」 ひと足先に教室を出た先生に呼ばれる。 私は走って廊下に出た。 「ずいぶん色っぽい恰好のままだな。」 確かにジャージもなかったため、体操着と短パンだった。先生にそう言われ急に恥ずかしくなった。耳まで赤くなる。 「制服は?」 「体育から戻ったら、ロッカーから消えてました。」 さすがに、先生も難しい顔をした。学校内の誰かの仕業か、外部の人の犯行か。 考えると、怖くなり涙ぐみそうになる。 前へ |次へ |
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