《MUMEI》

「広崎・・・。」
思った以上に、落ち込んでいる私に、先生もかける言葉がない様子だった。

「5分で用意するから、鞄持ったら、裏側の駐車場で待ってろ。」
先生はポンと私の頭を触って、足早に職員室に向かった。
私は何がなんだか分からず、言われた通り、駐車場へ向かうことにした。



「あの・・・?」
先生に促されるまま、私は先生の車の助手席に乗っていた。

ふと、百花が話していたことを思い出した。
『先生には離れられない人がいる。』

この席はその人専用なんだろうね。

また胸が苦しくなった。

「すぐ着くから。」

5分経たずに、目的地へ到着した。駐車場スペースが2台だけある小さな洋品店のようだった。

ちょうど6時を回る頃で店の人がシャッターを降ろそうとしている。

「洋介!」
その後ろ姿に、先生は呼び掛けた。
振り返りキョロキョロしている。先生と同じくらいの歳の男の人だ。

「あ、ナナさん。」

「悪いんだけど、こいつに制服作ってくれないか?」
こんな時期に?と言わんばかりに、洋介という人は私を上から下まで確認した。

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