《MUMEI》

「・・・来年着る分なら、今日じゃなくてもいいっすよね?」
くまなく私を見た結果、その答えが出たようだ。

「ぷっ。こいつもう中3だから。」

先生の知り合いらしき人も、先生に似て失礼だと思う。私は少しむっとした。

「ナナさんの頼みじゃしょうがない。どうぞ。」

シャッターを閉めずに、中へと促された。
「先生・・・私、制服買う、お金ないよ。」
小声でつぶやいた。

「・・・出世払いでいいよ。」
先生はめんどくさそうに答えた。そんな事気にするなという風だった。

「良かったね。体で払えとか言われなくて。」
洋介と呼ばれてた人は、ニヤニヤしながら、そう言った。

洋介さんは、先生の後輩らしい。中、高ともに一緒で、今も良く飲みに行ったり、サッカーしたりしているそうだ。

先生はこの街の出身なんだ・・・。
この学校の卒業生ということになる。

昔からこの洋品店で、制服を作っているらしく、洋介さんが跡取りをしてからも、先生は白衣などを買いにちょくちょく顔を出してるらしい。


「なかなかスタイルいいね。奏ちゃんは。小さいわりに胸でかいし。」
洋介さんはそんなスケベなことばかりいう。採寸されてる以上、体型がばれてしまうのはしかたないけれど。私は無言で抵抗した。

「あんまり、からかうなよ。」
さすがの名波先生も見兼ねてフォローしてくれる。

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