《MUMEI》

「じゃあ月曜日の朝には仕上がるよ。」

「ありがとうございます。助かります。」
私は深々とお辞儀をした。
「悪かったな。こんな時間に。」

先生と私は洋介さんにお礼を言いながら、店をでた。
なんだかんだからかわれたが、相手に気を使わせない、良い人なのだと思う。



「良かったな。制服。」

車で自宅まで送ってもらう途中、何故かさっきよりドキドキしながら、助手席に座っていた。日が落ちて、暗いせいかもしれない。

「はい。先生には何てお礼を言ったら良いか。」

「優等生っぽい発言だな。第一印象どおり。」
少し笑いながら、話している。またあの優しい笑顔だった。

やめてほしい・・・。
これ以上そばにいると、心ごと持って行かれそうだから。

「ちゃんと出世払いしますから。」

「期待してないよ。」
優しく言われると、苦しくなる。私は慌てて
「じゃあ、体で。」
と言ってしまった。

先生はこちらを見た。
驚いた顔をしている。私は目を反らし、俯いた。

「無理するなよ。洋介にからかわれたくらいで、すぐ赤くなってたくせに。」

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