《MUMEI》
*誘惑*
すると紫堂は困ったような笑みを浮かべ、椅子から立ち上がると、デザートを取りに行くと言い残し、調理場へと入っていった。

「‥‥‥‥‥‥‥」

紫堂が目の前からいなくなったので少し安心したのか、瑠果は小さくため息をついた。

(認めないぞ、私は‥)

丁度その時、紫堂がガラスの器をトレイに乗せ、戻って来た。

「!?」

瑠果はそれに釘付けになる。

(な‥何ゆえ紫堂は知っているのだ‥!?)

チョコレートのかかったアイスクリームは、瑠果の大好物なのだ。

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