《MUMEI》
父のこと
佐久間の提案に母は…


「そんな…二人の邪魔するようなことして、ええんやろか…」


躊躇している様に見せかけて一緒に付いてくる気満々だった。


「ほら、何とかヒルズ?あそことか行ってみたいなって思っててん」


「お母さん!あんたホンマに図々しいなぁー」


私が言うと、佐久間が、


「じゃぁ、今日は東京観光にしましょう!」


と言い、結局三人で出かけることになった。







母の言う何とかヒルズで昼食をとり、食後のコーヒーを飲んでいると、母がまた余計なことを話し始める。


「愛加の父親は仕事人間で朝から晩までホンマによう働いてましてね、そんなんやから3ヵ月前に急に倒れて入院させたんです。」


佐久間は黙って母の話を聞いている。


「そしたら検査の結果、肺がんやって言われて、私、頭が真っ白になりました…」


「そうだったんですか」


佐久間は心配そうに相槌をうつ。


「愛加は家族の話を、あんまりしいひんでしょ?」


佐久間が返事をする前に私が遮った。


「お母さん!あんまり余計なことばっかり言わないでっ!」


「余計なことって…佐久間さんには家族のこととか、いろいろと知っといてもろうた方がええやない?」


私は佐久間に自分の事をあまり知られたくなかった。


「自分で説明するから余計なことしんとってや!」


母はつまらなさそうな顔をして、


「ほな私の話でもしようかしら?」


と、また勝手に自分の話をはじめた。

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