《MUMEI》

「いや……たまたまだよ…。

―――…少しばかり運が良かっただけさ…。」


僕は謙遜して杯をすすめる…。


どうも誉められるのは苦手だ…。


カオリちゃんは酔いがまわったのか、赤ら顔で僕の肩に甘えている…


「あーあ…私、結婚するの早まっちゃったなぁ…」


「なに言ってんだい…

君のご主人だって立派な人じゃないか…

…中島だって…今じゃ財務省のキャリアだろ?(笑)」


「うぅん……磯野くんには及ばないわ…。

あの人ったら、利己的でエゴイストで………

それに……」


そう言いかけて、彼女はグラスを口に運んだ。

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