《MUMEI》
*無理*
「お嬢様、何かお持ちしましょうか」

扉の向こうから、紫堂の声がした。

その問掛けに、瑠果は渋々答える。

「いらん。とにかく余計な世話を焼くな」

「それは契約に反するのでは?」

「ならば契約は取り消しだ」

「それは無理です、瑠果お嬢様」

「何故だ‥!?」

「契約を取り消す事は無理なのです」

「勝手な事を言うなッ」

「困りましたね‥」

紫堂はしばらく扉の前にいたが、ティーカップを磨きに戻って行った。

(契約を取り消す事が出来ない‥だと‥?)
瑠果は愕然とした。

(どういう事だ‥!?)

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