《MUMEI》

 


「……親父ともう一回話し合ってみる。」

七生が着替えている俺を見ながら言う。

「本当?!」

思わず、ベッドに飛び込んだ。
よく言った七生。

「ん……逃げ続けてたら何も進まないし。

蟠りははっきりさせないと。弱っている姿ばっかり見せてたら二郎が放って置けないだろ?」

七生は力無く笑う。

「それは……その迷いというか元気になってもらう為というか……」

そうか、さっきのは七生を誘惑したことになるのかも。
考えたら、相当恥ずかしいではないか。よし、もう、考えない。

「……あんな悩殺続けられたらおかしくなる。」

冗談言えるくらいにはなったみたいだ。

呆れ半分、安心した。
左手で七生の右手を探る。
余った右手で七生の首を胸まで引き寄せた。

「俺、気の利いた言葉なんて思い浮かばないし、月並みだけど、……………………元気だせ?」

心臓の音を聞かせる。
七生は無抵抗にじっとして俺の鼓動に耳を傾けていた。

赤ん坊みたいに揺すってやった。
七生の瞼がトロトロ落ちてきた。

格好悪いどうしようもない七生を支えられるのは俺しかいない……。

そんな七生に愛されているのも俺しかいない。

カッコイイ七生もダメな七生も全部、俺の大事。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫