《MUMEI》

『え、じゃあもう体育館使えないの?早すぎ!』

「一週間も前から何を準備する事があるんだろね?」

『ん〜…暇が出来るってこういう事を言うのかな。』

「ぶっちゃけ生徒なんか全然参加しないし。なのに手伝いとか。」


サユと愚痴ってた。

宿泊研修から帰って来て何週間目かのこの日。

一週間後に控えた学祭…と言うかなんと言うか。

主に父母らが頑張るバザーのような行事がある。

北橋祭と呼ばれるそれは出店やレクレーションなんかをやるんだけど、毎年生徒の兄弟や父母らばかりが参加して楽しんで、生徒自身はほとんど来ない。

理由は…サユの言う通りで、申し訳ないけどつまんないから。

高校や大学の学祭を想像してはいけないのだ。

そしてその期間の締めには校内の合唱コンクールがある。


『やっぱ火事の影響…うわっ?!』


バフッ


「一葉!だいじょう…ぶ…っはは!」

『…だいじょばない。土臭い!(笑)』


全開になったグラウンド側の体育館のドアから、大きなブルーシートが風に運ばれて来て。

土埃を纏(まと)ったそれを見事に被った。


「あはは!お婆さんみたい!(笑)」

『数十年後のあたしだ♪』


「わりぃ!大丈夫?」


『…へーきです!はいこr…』


「一葉!!」
『秀平?!』


サ「え、知り合い?…ですか?」

秀「だよ♪な?つーか久しぶり!」

『うん…!そっか、秀平もここだもんね!』

秀「そうそう。体育祭見てたぞ!(笑)」

『あたし全然気付かなかった…。』


中村秀平(ナカムラシュウヘイ)。

小学校の時に通っていたや野球のチームメンバーだった。

あたしより1つ上で、カズ兄とももちろん知り合い。

そして…


秀「今度ゆっくり話そ!顧問うるせーから。またな♪」

『うん、またね!』


「どんな関係?」

『あのね、野球やってた時の先輩♪』

「そうなんだぁ。ちょっとかっこ良い♪」


そして。

前に小池が突いて来た、あたしの"好きな"人だった。

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