《MUMEI》
本心
――有理がまた何も話してくれなくなった。

オレ何か怒らせるようなこと言った?

……むしろ喜んでくれると思った。

今まで何度も『学校辞めて働こうかな』って有理に言って怒らせた。

『お前は黙って勉強しろ。これからは学歴が物を言うんだからな』

自分のことは棚に上げて、何言ってるんだって思った。

そんなこと言うくらいなら、「働く」なんて言わなければいいのに。

オレは、別に働いてもよかった。

芸能界じゃなくても、工場とか会社員とか、清掃工場でもどこでもいい。

とにかく有理のためになるなら、どんなに辛い仕事でもできる。

有理はどうしてわかってくれないのかわからなかった。

――そろそろオレを頼ってもいいんじゃないか?

これでもお前の兄なんだ。

ひとりで気を張るなよ。

ひとりで抱え込むなよ。

ひとりで悩むなよ。

オレとお前はふたりでひとつ。

どっちかが欠けては決して生きていけない。

――違うのか?そう思ってたのってオレだけ?

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