《MUMEI》

「ヤイちゃんも何か描く?」

スケッチブックを一枚破ってくれた。

「――――――――――え」

俺なんかに勿体ない。

「色鉛筆あるよー」

24色入りで鮮やかだ。

「ヤイちゃん前髪長いね。ピンで留めちゃお。」

前髪を掻き上げられてピンで留められた。
されるがままだ。

「何?卜部ママゴト?」

部室に入って来た副部長にツッコミ入れられてしまった。
机の上は確かにご飯が出されてるようだ。
俺はその真ん中にいる人形みたいだ。

卜部先輩が髪をくしゃくしゃすると力が入らないようになってしまっているのだから仕方ない。

「違うし!部活動中だし!」

「どうだか……鬼久保君気をつけてね。こいつ昔から可愛い子大好きだから喰われちゃうかも!」

「喰われ……?」

副部長の言っている意味が分からない。

「余計な事を吹き込むな!」

「イヤー鬼久保君助けて!」

副部長は拳を振り上げた卜部先輩の盾に俺を使う。
座ってみるとより、先輩の背が高いということが強調される。

「小枝子ー!卑怯だぞ!」

「世喜に言われたくない!」

気付いた。
互いに名前で呼び合っている。


「……二人は仲良しなんですね!!」

俺の間で二人は一時停止した後、大笑いされた。

「ヤイちゃん最高!」

「あー可愛いわ」

二人が何故笑うのかよく理解出来ない。
二人だけにしかない世界なのか?

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