《MUMEI》
*命令*
「どうされましたか、お嬢様」

「!?」

背後から聞こえたその声に、瑠果はギョッとして振り返った。

「しっ‥紫堂っ、おおおお前何をしていたのだッ」

「?」

紫堂は何も知らないかのようにキョトンとした。

実際、何も知らなかったのである。

「紫堂お前ッ、まさか、火を点けっ放しで鍵をかけたのか!?」

「‥?───あ」

咄嗟に思い出したらしく、紫堂は鍵を外しにかかる。

「な、何をするつもりだ紫堂?」

「大火事になると大変ですから」

「な、消火をするつもりか!?」

「お屋敷を火の海にする訳にはいきませんからね」

「止せッ」

「お嬢様は下がっていて下さい」

「断るッ」

断固否定する瑠果に、紫堂は微笑んで言った。

「──お嬢様、これは僕の命令です」

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