《MUMEI》
*心配*
瑠果は驚いた──というよりもむしろ呆れていた。

「な‥何を言っているッ」

「近付かないで下さいね、危険ですから」

紫堂は瑠果を食堂前の廊下へ連れ出すとそう言い残し、自分は再び調理場の扉の前に戻って行った。

瑠果は何がなんだか分からずに唖然としていたが、正気を取り戻すと、気付かれないよう扉の前へと戻り始めた。

心配しているつもりはなかった。

だが、瑠果は行かずにはいられなかったのである。

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