《MUMEI》

瞳さんは、結局、一番安全な人に、私の側にいるよう頼む事にした。

それは、変わり者が多い十人の中で、瞳さんがもっとも信頼していた女性だった。


「薫子(かおるこ)、お願い」


「はいはい」


この中で、一番小柄な着物の女性が、私の手を取り、皆の所へ私を連れて行ってくれた。


「すみません」


「いいのよ」


薫子さんは、花のように微笑んだ。


竹花(たけはな)薫子さんは、和菓子屋『花月堂』の一人娘だ。


薫子さんの母親が着物の着付けの先生をしているから、その影響で、着物を着ている事が多い。


私の記憶の中でも、学校の制服以外は薫子さんはいつも着物だった。


ちなみに、この十人以外は

最年少の私と雅彦


私達と俊彦世代の間にいる五人


俊彦達の上の世代(二十九までで、地元商店街就職のみ)

十人


だった。


ここに、東京から来た『シューズクラブ』の和馬と孝太


『クローバー』の咲子さんを入れた


総勢三十名が、定員二十五名のホールにひしめきあっていた。


私は、薫子さんにガードされつつ、俊彦や三人組と微妙な位置を保った位置をキープしていた。


「皆飲み物もらったね」

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