《MUMEI》

私の言葉に春樹さんが固まった。


周囲の空気が凍る。


「誤解しないで下さいね。追い出されたわけじゃないんで」


「あ…そうなの?」


春樹さんはホッとした顔をした。


「太郎(たろう)さんが…結婚」


(ん?)


今度は、薫子さんが青くなった。


「薫子さん?」


(もしかして…)


その時、瞳さんが私に囁いた。


「薫子の初恋、太郎おじさまだから」


―と。


「え?」


「…というか、…瞳以外は皆そうだと思うぞ」


「えぇ?!」


私は瞳さんの言葉に驚いたが、克也さんの言葉には更に驚いた。


「兄さん、昔から老若男女問わずモテてたわよ」


「そうなんですか?」


私にとって父は、ただの『大きな子供』だった。


私は父が二十歳の時の娘で、父は確かに若い父親だから、…だから、騒がれているだけだと思っていた。


「あのオーラにやられなかったのは、蝶子ちゃんと瞳ちゃんと、私位よ」


「知りませんでした」


私は父のオーラを全く感じていなかった。


「そう言えば、相手の人ってどんな人?」


「あ、写メありますよ」


私は携帯を持ってきて、画面を見せた。


「「どれどれ?」」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫