《MUMEI》

(仕方ないな…)


私は紙コップに手を伸ばしたが…


ヒョイッ


?


大きな手が、紙コップを奪った。


「何これ? 度数強くない?」


匂いを確認して顔をしかめたのは


雅彦だった。


「この位、普通だろ?」


「駄目だよ。主役が酔いつぶれたら、大変だからね。
はい」


そう言って、雅彦はウーロン茶の入った紙コップを私に渡した。


「ありがとう、雅彦」


「どういたしまして」


雅彦は、そのまま、笑顔でワインを飲み干して…


バターンッ!





真っ赤な顔で倒れた。


「雅彦?!」


話しかけても雅彦は、応えない。


「「おい?!」」


和馬と孝太も慌て始めた。

「あ〜、平気。

寝てるだけだから。

克也、こいつ、頼める?」

いつの間にか俊彦が近くに来ていた。


三人組は私の携帯画面を見るのに夢中だったようだ。

「わかった。
明日受け取りに来いよ。

…そろそろ帰るわ。

…またな」


「あ、はい」


克也さんは軽々と雅彦を抱えて店を後にした。


克也さんの酒屋は、『クローバー』の隣だった。


それから、皆時間を確認し…半分以上が帰っていった。

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