《MUMEI》 誘い「そう言えば、限定版持ってるか?」 「え? あるの?そんなの」 出ているなら、是非欲しいと思った。 「最近車のCMに使われてたりしてるから、出したらしいぞ」 「あぁ、あれね」 私はそのCMに見覚えがあった。 と言うより、知っている曲が流れて驚いたのだ。 「最近ていつ?」 「一ヶ月前」 (うわ、微妙…) 「欲しいか?」 「欲しい!」 「じゃ、明日行くか」 「? どこに?」 孝太は冷酒を飲み干した。 「俺が知ってる、洋楽専門のCDショップ。明日休みだろ?」 「う、うん」 (そうだけど…) 「何? 二人でデートの相談?」 咲子さんがデザートのミニパフェを盛り付けながら、カウンター越しに声をかけてきた。 「違っ…」 「何だと!」 バタバタと、俊彦がカウンターにやってきた。 (地獄耳) カラオケしながらも、私達の会話は聞いていたらしい。 「デートって何?!」 俊彦の大声に、周囲の視線が集まる。 「何の話?」 春樹さんがわざわざ歌っていた曲を途中で止めた。 「明日一緒にCD買いに行こうってだけの話」 孝太が答えた。 「ダメダメ!」 前へ |次へ |
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