《MUMEI》
3年前の真実。
ドキッとした…。



“私に黙ってたヨウスケのことって何なの?”




『俺の話を聞いたらお前、絶対泣くからコレしっかり持っとけ。』




そう言ってティッシュ箱を投げてきた。




『私、もう泣かないよ。涙枯れちゃったしね。』




と言いつつ、ティッシュはしっかりと握っておく。




『やっぱり…コウタはずっとヨウスケと繋がってたんだね。』




『…あぁ。実は3年前…ヨウスケが学校を辞めた日…』




コウタはゆっくりと話はじめた。




『…あの日。退学届を出しに行く前に俺、ヨウスケに呼び出されたんだ。
一ヶ月前にアマチュアで参加したモトクロス大会で、なんかでかい企業にスカウトされたって言ってた。
なんか来月ある関東大会に出場予定だった企業の選手がケガで出れねぇから、ヨウスケに出てほしい。って言ってきたんだと。』




『…へぇ。そうだったんだ。知らなかった。』




『でな…ヨウスケは大学だけは卒業したいから待ってくれって頼んだらしい。…でもそれじゃ遅いって。今すぐ来れないなら他を探すって言われたそうだ。』




『…。』




『それから、ヨウスケは悩んだ結果、東京に行くことを決めたってわけ。』




『それなら、私に言ってくれれば良かったじゃん。…何の相談も無しに、私をフッて行く意味が、分かんないよ。』




『…いやっ。違うんだよ。話にはまだ続きがあんの。』




『…。』




『それで俺“瑠伊はどうすんだ?”って聞いたんだ。そしたらアイツ“別れる”って言いやがった。頭にきて殴ろうと思ったらヨウスケのヤツ…………。』




『どうしたの?ヨウスケはなんて言ったの?』




『“瑠伊を頼む”って。…ヨウスケは俺の気持ちに気付いてたんだ。』



『…私をコウタに?』




『ヨウスケは言ってた。欠場になった選手のケガは命にかかわる程だった。って。プロのモトクロス選手になるってことは、いつ死んでもおかしくないって。だから俺は、瑠伊を幸せに出来ないって。』




私はボロボロと流れてくる涙を拭くことさえ出来なかった。




コウタも泣きながら話し続けてくれた。




『…俺は“勝手な事ばっか言ってんじゃねぇよ”ってヨウスケを殴った。
アイツは抵抗せずに黙って、殴られてたよ。
…最後に
“お前の頼みなんか聞かねぇ。瑠伊のことは知らねぇ。”って言ったら
“分かった、他を探すわ”って言って行っちまった…。』




コウタは涙を拭いて




『これが、お前の知らなかった。3年前の真実。』




と言って、笑った。




『ヨウスケはお前が大切だから別れたんだよ…。』




私は黙って頷いた。




『…ヨウスケには、かなわねぇわ。』




と言って、大の字に寝転んだコウタは天井をジーッと見つめながらこう言った。




『ヨウスケは帰ってきてる。瑠伊に会いに来たんだ。来週にはまた戻らなくちゃいけないらしいから、そのうちお前の前に現れるだろうな。』




私はまた黙って頷いた。




『会いに来てくれるといいなぁ…。』




コウタも優しく頷いた。

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