《MUMEI》
映画の感想
「あんまり好きじゃない、こういうの」


これはDVDを見終わった、最初の私の素直な感想。


「そう?俺は好きだけどなぁ〜」


この鈴木の感想が妙に気になった。


「え?どこが?」


「なんか究極の愛な感じがして。憧れるなって」


究極?憧れる?


「でも乱暴だし、自虐的な感じもするし…憧れる要素なんてないわ!」


鈴木がそんな恋愛に憧れるなんて困る!
そう思い必死に否定する。


「私はもっと、ほんわかした幸せそうなラブストーリーがいいな!」


その私の意見に対し、


「それはお前の意見だろ?俺の意見を否定することないんじゃない?」


少しムッとしている。


「だって鈴木にシド・ビシャスみたいな兆候が現れたら嫌だもん!!」


ムキになって言い返した。


「はぁ?憧れるって言っただけで、目指すなんて言ってねぇだろ?何、勘違いしてんだよ…」


鈴木が少しうんざり気味に言う。


「でも憧れるってことは、潜在意識の中で、その要素があるってことよ!」


よく考えたら元カノの詩織さんは激しい性格でガラス割ったり…
普通ならドン引きな女と何年も付き合ってたのが、良い証拠だわ!


「いい加減にしてくれよ!潜在意識とかアホだろ?なんで映画の感想を言っただけで、そうなるわけ?」


鈴木はイライラしている。


「もう良いじゃん。俺は好き、お前は好きじゃない。それでおしまい!」


鈴木はそう言ったが、私はまだスッキリしていなかった。


でもこのまま言い合っても、また鬱陶しがられるだけだし、今日はやめとこ…


「分かった。じゃぁ、この話はおしまい!」

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