《MUMEI》

俊彦が反論した。


「そんなの孝太が買ってきて渡せばいいじゃん!」

「面倒」


確かに、孝太が私の為にお使いするのはおかしい。


「店の位置、教えてもらえれば、私一人で行くよ?」

私の提案に、孝太は首を横に振った。


「わかりづらい位置にあるから、教えるの面倒。

一緒に行った方が早い」


(あぁ、そういう事…)


孝太は別にデートとかじゃなくて、同じ趣味の私に店を教えたいだけなんだと思った。


「じゃあ、俺も一緒に行く!」


「却下」


「何で?!」


「うるさいから」


「静かにしてるから!」


「信用できない」


私も孝太と同じ気持ちだったから、孝太が返事をする度に、頷いた。


「それに、明日雅彦を迎えに行かないといけないでしょ?

雅彦、私の為に倒れちゃったし…」


?


和馬が俊彦の後ろからメモを見せた。


「あの通り喋って」


孝太が小声で言った。


(仕方ないな…)


私は、心にも無いセリフを口にした。


「弟想いの俊彦にしか、頼めない事なの。

お願い、俊彦。

俊彦だけが、頼りだから、頼みたいの。

…駄目?」


私は、手を合わせて上目遣いで俊彦を見た

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