《MUMEI》

俊彦は春樹さん達三人に、店の外まで連れ出された。

カウンターで唖然としている和馬と孝太に、結子さん・麗子さん・愛理さんの三人が何か説明していた。


深刻な雰囲気に耐えられなくなった他の人達が、私に挨拶をしながら帰って行ったが…


私は返事をする事ができなかった。


「大丈夫?…じゃ、ないのね? まだ」


「すみません」


私は瞳さんから水を受け取り、ゆっくりと飲んで、気持ちを落ち着かせた。


薫子さんは、私の隣で震えが止まるまで、ずっと手を握ってくれた。


「…すみません」


(せっかく皆集まってくれたのに)


私は泣きそうになった。


「いいのよ。…和馬君達に、蝶子の事言えなかった私達にも責任はあるわ」


「それは…」


皆の優しさからだと、私は気付いていた。


『あんな事』は


後から来た和馬や孝太にわざわざ言う必要は無い。


「知ってて暴走した俊彦はもっと悪いけどね」


瞳さんの言葉に、薫子さんも頷いた。


そう。


俊彦はあの時。


誰よりも、私の側にいた。

「まったくあの馬鹿は!」
「「帰らせたから、もう大丈夫だよ!」」


春樹さん達が戻ってきた。

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