《MUMEI》
*宿命*
「‥‥‥‥‥‥」

「お嬢様」

扉の向こうから紫堂の声がして、瑠果はビクッと肩を上げた。

「そ、その呼び方はめう止せ」

「ほな、瑠果でええんか?」

「構わん」

「さっきは──‥いきなり言うてもうて悪かったな」

「いや、おあいこだ。私も動転してしまったからな‥」

「瑠果」

「?」

「オレの命令聞いてくれるか?──めっさ大事な事やねんけど」

「まだあるのか‥」

瑠果は呆れたように大きくため息をついた。

第一執事が命令するなど無礼にも程がある、と瑠果は思う。

だがどうしても、彼女はこの執事に逆らう事は出来ない。

宿命であるかのように、絶対服従を余儀なくされてしまうのである。

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