《MUMEI》

「恋をするとどうなるの?」

「何だよ唐突に。」

競技場を前に白戸とご飯を食べる。
毎度思うが白戸のお弁当は手が込んでいて美味しそうだ。

「……何となく。あ、先輩速い!」

200メートル一位だ。

「新記録みたいだな。卜部先輩陸上だったらしいよ。

何となくで色恋話?

……ま、いいけど。恋をするなんて人それぞれの主観だからね。
その人がカワイイとかじゃ理由にならない。


なにかで見たのはそうだな……、
その人の一部になって共有したいという想い、内側から滲み出るどうしようもない気持ちなんだってさ。」

白戸は同い年なのに大人だ。小さい頃苦労したからだと聞いた。

「ふーん……あ、卜部先輩やっぱり新記録なんだー。カッコイイ。」

陸上だったのに何故美術部になったのだろう。

「そうか?卜部先輩カッコイイまでではないような……。」

「カッコイイじゃん!背が高いし足速いし!
白戸はレベル高いカッコイイ人達に囲まれているからそんなこと言うんだよ!」

あんな人達に囲まれたらそりゃあ目も肥えるよ。

「いや、一般論だから。にしても足が速いとか背が高いとか基準が幼稚だな。」

酷い幼稚だなんて……。

「……悪い悪い、言い過ぎた。恋の話だったっけ?」

ごまかされた。

「もう白戸には相談しないから!」

世話になっている先輩なのに薄情なやつだ!

「そう言うなよ。親友!


恋はその辺、そこかしこに転がっているんだって、恋をすると日常のほんの些細なことさえ自分には大事に想えて、全てがひっくり返るんだとさ。」

肩を組んできた。

「それも見たやつ?」

「半分受け売り、半分実体験。まだひっくり返ったことはないけどな?」

白戸はにやりと笑った。
そういや、二人でそういう話は初めてしたかも。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫