《MUMEI》
*午後*
その日の午後。

「紅茶をお持ちしましょうか」

庭にいた瑠果に、紫堂が声をかけてきた。

どうやら、仕事の間はいつも通りの口調で話すらしい。

瑠果は微かな違和感を感じながらも頷いた。

「畏まりました」

紫堂は会釈すると屋敷へ戻って行った。

暫くして紫堂が戻って来ると、瑠果はベンチに腰掛けて指輪を眺めていた。

日の光に反射し、透き通った紫色が輝く。

「お嬢様」

「おお、すまん‥戻っていたのか」

「どうぞ」

「ああ」

差し出されたティーカップを受け取りながら、瑠果はぎこちなく礼を言った。

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