《MUMEI》 「お、ヤイちゃんもボール投げ?」 「はい」 ボール投げは一年から三年まで一斉に始める。 俺は運動音痴だからそんなに目立たない競技ばかりをしている。 「頑張れよ、肘真っ直ぐな!」 卜部先輩は練習投球のときに手ほどきしてくれた。 タイミングを合わせて、足と腕に勢いをつける。 三回投げる。 最後に投げたのが綺麗な放物線を描いた。 「よしよし良くやったな!」 先輩が親指を突き上げて笑う。 一年生の中で三位だなんて俺にとって快挙だ。 卜部先輩のお陰……? 「ヤイちゃん、新記録出すからよく見といてよ!」 卜部先輩の背中、凛々しい。言った通りにしてくれるんだろうな。 風を切る音、先輩の指が太陽を摺り抜ける。 ボールが勢いを増す。 フォームが教科書のお手本みたい。 先輩から目が離せない。 ボールが近付いてく。 視界が暗くなる。 「 ――――鬼久保!」 白戸の声がする。 青い空が綺麗だ。 ひっくり返るってこういうことなんだなと思った。 前へ |次へ |
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