《MUMEI》 間違いでは無い「…そうきたか」 待ち合わせの駅前に現れた孝太が私を一目見て、残念そうに言った。 「間違って無いでしょ?」 昨夜書かれていたメモには 『すっぴん禁止 トレーナー・ジーンズ禁止 スニーカー禁止』 とあった。 だから、私は、就職活動で着ていた黒のパンツスーツのジャケット無しバージョンと、黒いパンプスを履いていた。 久しぶりに、ファンデーションも塗ったし、眉も描いた。 リップも塗った。 『限りなくすっぴんに近い最低限のナチュラルメイク』だが、メイクには間違い無かった。 「…わかりやすく足出せって書けば良かった」 「それだったら来なかったわよ」 限定版は惜しいが、そのためにそこまでしようとは思わなかった。 「まぁいいか。…行くぞ」 「一人で歩けます」 私は孝太の手は取らなかった。 …駅前や、待合室にいる女の子達の視線が孝太に向いていることはわかっていた。 孝太は私と似たような…ほぼ同じ服装をしていた。 何だか私が孝太に合わせたみたいで、居心地が悪かった。 この上、手を繋いで歩いて、変な誤解を招きたく無かった。 「そうか」 孝太は手を下げた 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |