《MUMEI》
シドニーか鈴木か・・・
まずいなぁ・・・
シドニーってだけで浮かれて、鈴木のことスッカリ忘れてた。


リナさん、断ったら怒るかなぁ・・・


でも、タダでシドニーに行けるのも捨てがたいんだよねぇ。


かといって鈴木にはなんて言おう・・・


あぁぁぁぁぁ。
パスポートのこともあるし私には悩んでるヒマもないんだった・・・


どうしよぉーーー




「何一人でブツブツ言ってんだよ」


わっ、鈴木!?


「な、なんでここに!!!」


いつの間にか鈴木が私の部屋の真ん中に立っていた。


「鍵が開いてたから勝手に入った。気付かなかった?」


「気づいてたら一人でブツブツなんて言わないでしょ・・・」


ていうか急に来るなんて、私、すっごいひどい恰好してるのに。


「で、何をブツブツ言ってたんだよ。どうしよー!とか、悩み事?」


「悩みっていうか・・・実は・・・」


鈴木に全てを話してみた。


「なんで悩むの?」


お!


「俺と先に約束したんだから、リナさんに早く断りの電話いれろよ」


そっち?


「そうだね・・・鈴木と先に約束したしね・・・」


そう言いながらシドニーが心のど真ん中に居座り続ける。


「でも、シドニーにタダで行けるんだよ。すごいラッキーじゃない?」


鈴木が「行ってこいよ」と言ってくれさえすれば・・・


「そういう問題?」


鈴木はムッとして言う。


「普通の日ならまだしも俺の誕生日もあるんだぞ。なのにシドニーシドニーって」


鈴木の機嫌がドンドン悪くなっていく。


「お前は薄情な女だな」


「そこまで言わなくても・・・私だって、どうしようって困ってたんだから!」


覚えてたら最初っから断ってたわよ。
たぶん・・・


「俺が言いたいのは、悩む問題じゃねぇだろ!?ってことだよ。何を悩む必要があるんだよっ」


「そりゃ悩むよ!シドニーに行きたいって思ってて、いきなりそんなチャンスが転がり込んできたんだから!」


鈴木がため息をつく。


「はぁ〜。お前とは話になんねぇ。俺、帰るわ。好きにしたら?バイバイ」


そう言って鈴木は帰って行った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫