《MUMEI》
感謝
母が乗った新幹線を見送った後、私は気になっていたので佐久間に尋ねた。


「さっき、私がトイレに行ってる間にお母さんから何を言われたの?」


「何って・・・愛加ちゃんをよろしく頼むって言われたよ。だから幸せにします!って言っといた。」


「それだけ?」


佐久間の目をじっと見たが、嘘をついているようには見えなかったので少し安心した。


「でも幸せにしますは言いすぎじゃない?」


このセリフは気に食わなかった。


「でもお母さん安心してたよ。それで良いんじゃない?」


「そうね・・・」


あまり納得は出来なかったが、しかし今日は佐久間に感謝をしていたので、それ以上言うのをやめた。


「今日はありがとう。母の相手や・・・、嘘をついて演技してくれて・・・。助かったわ」


「こちらこそ。愛加ちゃんの京都弁が聞けて新鮮で良かったよ!」


佐久間は嬉しそうに笑っている。


「そんな小さなことで喜ぶなんて、佐久間さんは単純ね!」


「そ、俺は単純。単純が一番だぜ」


佐久間は何を言っても前向きに受け止める。


「そろそろ帰ろうか?送ってくよ」


いつも自分から帰るなんて言わない佐久間の意外な発言に驚いた。


「え?今晩も泊まる予定じゃなかったの?」


「もしかして泊ってほしいの?」


「違うわよっ。バカ。勘違いしないで!」


「はいはい。分かってるよ。俺は・・・自分の部屋の整理をしたくなったし今晩は帰ります!」


そう言って佐久間は私をマンションの前で降ろして、ご自慢のアルファロメオで帰って行った。


珍しいこともあるのね…

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫