《MUMEI》
▽
「ほら、見てよ!これ!」
「あ〜!内藤にそっくり!」
「そっくりじゃなくて本人だよ、もーマジで勘弁してよー」
コンビニに引っ張って来られるなり、この雑誌にも載ってる、これも!これもって未來がムキになって見せてくる。
変なテカテカの服着てヒョロヒョロの裸見せてんのとか、格好つけて知らねーオッサンとトークしてんのとか…、ああ、やっぱり竹山が良い。
「だいたいさー同じ大学に来てんの知らないのあんた位だよ」
「だって未來だって話題すら出さなかったじゃん」
「したよ!何度もした!あんたいっつも人の話聞いてないからでしょ!」
そうだっけ?あーでも別にどうでも良いし。
「それより未來、そろそろバイトの時間じゃないの?大丈夫?」
「あ!ヤバい!ちょっと早く頂戴!」
未來はバックからごそごそ携帯を取り出した。
「は?何を」
「何って内藤君のメアドに決まってんじゃん!早く送れ、早く、早く」
私は未來の頭をバシッと雑誌で叩く。
「あー、何でよ〜!」
「何言ってんの!兄貴のファンだからって預かったアドレスなんだよ?これはダメ!ふざけんな!」
「も〜変なとこは真面目なんだから!私スッゴいファンなのに〜!」
嘘つけ、そんなの初耳だって突っ込むと苦笑い一つして未來は慌ててバイトに行ってしまった。
何気なく携帯を見るとお兄ちゃんからメールが来てた。
――豚肉300g買ってこいか…、了解!
速攻返信して私はコンビニを出る。
――私は母さんが再婚してからお兄ちゃんのマンションに一緒に住まわせて貰っている。
新しい父さんが嫌いな訳じゃないんだけど、やっぱり気を遣って生活するのって疲れるから。
お兄ちゃんもおいでって言ってくれたからすっかり甘えている。
「ビールも買っておくか〜!」
大好きなお兄ちゃんとまた一緒に暮らせる日々がなにげに嬉しかったりする。
ちょっと変な彼氏がいるのだけが気にいらないんけどさ…。
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