《MUMEI》

「ヤイちゃん大丈夫か!」

大丈夫な訳無い。目を開けたら卜部先輩がいるだなんて……。

「はい……」

起き上がると鼻が冷たくて触ってみた。

「あ、鼻血。
誰かティッシュー!」

卜部先輩が上向きの俺の背中を支えてくれながら叫んだ。
少し恥ずかしい。

「ヤイちゃんごめんな?まさかボール後ろに飛んでくとは……!」

そうか、ひっくり返たのはボールを顔面受けしたからだったのか。

でも先輩に対しては前よりもずっと違う……何かが植え付けられているみたいだ。
だって、ボールが当たったときも痛いとか怖いだなんてちっとも思わなかった。

「……今度何か食べに行きましょうよ。先輩の奢りでチャラにします。」

気付いてしまえば簡単な術式だ。









俺は……先輩に恋してるんだ。

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