《MUMEI》
*夕方*
そんな彼女が目を覚ましたのは、夕方になってからの事だった。

「紫堂‥?」

目を擦りながら問い掛けると、はい、と返事が聞こえた。

「お目覚めになられましたか?」

「もう‥夕方か」

瑠果はぼんやりと空を見上げた。

(私はあの後ずっと眠っていたのか‥?)

ほんの少しうたた寝をするつもりがすっかり寝過ごしてしまった事に、瑠果は後悔していた。

「お嬢様、どうか‥なされましたか?」

「いや、その──‥すまん」

「屋敷にお戻りになられますか」

「あ、ああ」

差し出された手を取りつつ、瑠果は頬を染めていた。

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