《MUMEI》
目的地
孝太はすぐに店に入った。

「いらっしゃい」


(わ…)


店内は狭いが、所狭しとCDが置かれていた。


壁に貼ってあるポスターも少し色褪せている。


店内に流れているのは、もちろん洋楽だった。


(雰囲気のある店だなぁ)


私がキョロキョロしていると


「若いお嬢さんにはつまらない店だろう?」


カウンターから白髪混じりの店長が声をかけてきた。

「いいえ、…すごいです」

あれも、これも…


探しても見つからなかったCDばかりだった。


(もう少し、持ってくれば良かったな)


限定版と昼食のお金しか入っていない財布の中身を確認して、私はため息をついた。


「…こりゃ、珍しい」


「だから、連れてきた。

…限定版、まだあるか?」

「あ、あぁ」


(そうだ、限定版!)


「あるんですか?!」


私は目を輝かせて、店長を見た。


「うるさい」


「…ごめんなさい」


つい興奮してしまい、私の声は、狭い店内に響いてしまった。


「…お前だってそうだったくせに」


「うるさい」


店長が笑いながら言うと、孝太は小声で言った。


「はい、これだよ」


「ありがとうございます!」

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