《MUMEI》
*広間*
屋敷の中に戻ると、瑠果は紫堂に、広間のソファに座るよう言われ従った。

「少し待っていて下さいね」

そう言い残して、紫堂は広間から出て行った。

瑠果はしばらく紫堂の出て行った方向を見つめていたが、ゆっくりと視線をずらした。

夕陽の柔らかな光が、大窓から差し込んで来る。

瑠果はそれを見つめて目を細めた。

そして思う。

(紫堂は何故私をここに止めさせておくのだ‥?)

『少し待っていて下さいね』

少し、と言ったはずなのだが、紫堂はなかなか戻って来ない。

瑠果はソファから立ち上がると、扉の向こうへと向かった。

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