《MUMEI》
合流
店長は最後の曲まで聴いて行ってもいいと言ってくれたが…


丁度、他のお客が来たし、孝太のさっきの携帯も気になったから、私達は一番好きな曲が終わったので、店を出る事にした。


「またおいで。お嬢さん一人でも、大歓迎だよ」


「ありがとうございます」

ウインクする店長に、私は頭を下げた。


「また来る」


「はいよ」


そうして、私達は店を後にした。


店内はゆっくりした雰囲気だったが、路地から中央通りに出ると、慌ただしい現実に引き戻された感じがした。


「教えてくれてありがとう」


「別に。こっちもいい曲聴けたし」


孝太は歩きながら携帯の電源を入れた。


すぐに、バイブが響く。


ピッ


『何で出ないんだよ!』


私にも聞こえる位の大声で、相手が怒鳴っていた。


(ていうか、…今の声)


私の近くからも聞こえたような気がした。


私は周囲を見渡した。


そこには…


中央通りのカフェのオープンテラスに座りながら手を振る


和馬の姿があった。


和馬は会計を済ませて、私達に合流した。


「やっと買い物終わったの?」


和馬の言葉に孝太が頷いた。


「何でここに?」

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