《MUMEI》
守る
たしかに、今までレッカたちの世界の人間には羽田たちは見えなかったはずだ。
見えたとしても、白いモヤのようにしか見えないと凜も言っていたではないか。
それなのに、彼には羽田と凜の姿が見えている。
おまけに、羽田は彼の手に触れたのだ。

羽田は改めて副長と呼ばれる彼を見た。
彼は羽田を見つめ返す。

「……あの、何か?」

反応に困ったのか、彼は頭を掻きながら羽田に言う。

「あ、いえ」

慌てて羽田は首を振った。

「とにかく、ここは危ない。早く指定の避難場所へ向かってください」

副長はそう言うとレッカに視線を移した。

「レッカ。おまえが送ってやれ」

「はい。……あの、この状態っていつまで続くんですかね?」

「さあな」

副長は言って、空を見上げた。

「実は、さっきみたいな新しいタイプのマボロシが次々と発生してるんだ」

「次々?」

「そう。しかもどの地域に出るのかもわからない。なぜ、いきなりこんなことになったのか、さっぱりだ」

副長は苦々しく口を歪めた。

「……奴ら、いったい何なんですかね?」

レッカが言うと、副長はしばらく考えるように無言で流れる雲を見つめていた。

「……さあな。あんな化け物のこと、わかるやつなんていないだろ」

「……そうっすね」

「俺たちは、ここを守るだけだ」

「……はい」

副長はレッカの返事に頷くと、三人にここから離れるよう促した。

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