《MUMEI》 マネージャー「最近…元気戻ったみたいだね」 「…そうですか?」 「うん。よかった」 マネージャーは嬉しそうに微笑んだ。 本当に心配してくれていたんだと流理は思った。 「有希、ひとつ―…聞いてもいいかな?」 「ハイ。どうぞ。何ですか?」 車の運転をしながらマネージャーは言った。 その顔はとても緊張しているみたいで、流理もドキドキした。 「君は……有希…なのか?」 「……へ?」 流理はあっけにとられた。 「あ―…違うんだ。その、たまにだけど、『春日有希』はふたりいるような気がして……。ここのところ最近は君で、つい前までは君じゃない子がやってたんだと思う。……たまに君になってたみたいだけど」 「…………」 「ご、ごめん!訳わかんないこと言って。困らせたかな?今の話は忘れてくれ」 ――マネージャーがそこまで感じていたことにただ驚くしかなかった。 オレは完璧に有理になりすましているつもりだったし、なれているつもりだった。 ……もしかしたらそれは、オレ達だけがそう思っていただけで、実はもっと多くの人にバレているのかもしれないな。 でも、それはそれで別に構わないとオレは思う。 『春日有希』が実は双子だったなんて、隠さなくてもいい事実だ。 オレはそっと微笑んだ。 オレが笑っていることに気付いたマネージャーが怪訝そうな表情でオレを見た。 「すごいです。よくわかりましたね」 「え……?」 「確かにオレは最近、前の『春日有希』から『春日有希』になってくれと頼まれたんです」 「じゃあ君は一体……?」 「簡単に考えてください」 誰にだってすぐに思い付く。 「双子……?」 「……さぁ。双子かもしれないですし、そっくりさんかもしれませんね」 「どうして…そんなことに?」 「最初から話すとすごく長いんです。これからおいおい話していきますから。オレのことも――…前の『春日有希』のことも」 前へ |次へ |
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