《MUMEI》 (それにしても) 相変わらず、孝太と和馬は食の好みが対照的な二人だ。 「何だ?」 「…孝太さんて本当に魚好きよね」 (だって…) 食べ方が、とても綺麗だった。 「悪いか?」 「ううん、綺麗に食べるなって思っただけ」 孝太は細く長い指で、箸の使い方が本当に綺麗だった。 持ち方も、完璧だ。 (それに比べて…) 「あぁ、イライラする!」 和馬は、トマトソースで煮込んだ豆と格闘していた。 持ち方も、かなりひどい。 「…スプーンでももらえば?」 「そんなカッコ悪い事できるわけないだろ」 (子供みたい) 「じゃあ、はい」 私は、茶碗蒸しに付いていた木製のスプーンを、手持ちのウェットティッシュで拭いてから、和馬に渡した。 「…ありがとう。何か慣れてる?」 「別に、普通でしょ」 私は本日二回目の嘘をついた。 『もう、俊兄は、仕方ないな〜、はい!』 『お前の使ったのなんかいらない』 『いいじゃん!別に!』 『よくない!貸すならちゃんと拭いてから渡せ』 『んも〜、仕方ないな』 …それから私は、俊彦の為に、ウェットティッシュを持ち歩くようになった。 前へ |次へ |
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