《MUMEI》 和馬の場合「で、さっきの話の続きだけど…聞いてる?」 「き、聞いてるわよ」 (いけない) つい思い出に浸ってしまった。 私は、食後運ばれてきたお茶を一口飲んだ。 「で、一体どういうつもり?」 気をとりなおして、私は食前と同じ質問をした。 「まずは、俺と孝太が『シューズクラブ』に来るきっかけから話させてくれる?」 「…別にいいけど」 それが私に嫌がらせをする理由に繋がるかはわからないが、二人の話には、興味があった。 何故、東京育ちの二人が しかも、元ホストと東大生が わざわざ田舎に来て、靴屋の店員になったのか。 「まず、俺からね」 和馬は説明を始めた。 「ほら、俺ってかっこいいじゃん」 (自分で言うかな…) 確かに和馬は目立つ容姿をしていたが、私は呆れて頷く事はできなかった。 「で、女の子も大好きなんだよね」 「そう」 私の反応に構わず和馬は話を続けるので、私は適当に相槌を打った。 「だから、俊彦と違って、俺は元々ホスト希望だったわけ」 「そう」 (じゃあずっとホストでいれば良かったのに) 「けどさ、俊彦には敵わなかったんだよね」 前へ |次へ |
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