《MUMEI》
思考回路パンク。
『えぇ〜!憐がヨウスケのお兄ちゃん!?』




『…あぁ。悪りぃ。』




『…。』




声が出ない…。
今、座ってるから分かんないけど、きっと腰抜けてる…。




憐は申し訳なさそうに話し続けた…。




『…俺とヨウスケは一つ違いの兄弟なんだ。俺は高校卒業してから、ずっとこの店で働いてた。
ヨウスケは、たまに顔を見せに来る程度だったんだけど、アイツがいきなり頼みがあるってやってきた。』




『…頼み?』




『…おぉ。東京に行くことを決めたけど、瑠伊っていう彼女が心配でたまらないって言ってた。コウタに瑠伊を頼んだけど断られたって…。別れ話をこの店でするから、その後の瑠伊を頼むって…。』




『…。コウタがダメなら憐に私を頼むって?……私は、猫や犬じゃないんだよ。何考えてんのヨウスケ。』



…自分勝手なヨウスケに腹が立った。




『…瑠伊が怒る気持ちも分かる。だけどな…ヨウスケも必死だったんだ…。』




憐はヨウスケをかばう。




『…そりゃ〜憐はヨウスケのお兄ちゃんだもんね。兄弟だから気持ちが分かるんだよ。私には全く分かんないよ。』




嫌みタラタラの言い方だった…。




『兄弟っつってもな、大人になって年が近すぎると…あんま仲良くないんだぞ。信じられねぇかもしれないけど…ヨウスケが俺に頼みごとしたのは、後にも先にも瑠伊の事だけだ…。』




『…アイツ言ってた。自分の勝手で別れるんだから、瑠伊には俺よりイイ男を見付けて、幸せになってもらいたいって。』




…コウタも話しだす。




『ヨウスケはもう東京に戻ったらしい…。“瑠伊に会いに行けなかった”って留守電入ってた。』




『…なぁ、瑠伊。どうしたい?お前はヨウスケに会いたくないか?』




憐とコウタがジッと私を見てる…。




『…私は何も知らなかった。……何にもだよ。ヨウスケがいなくなった日からずっと寂しくて…。最近やっと忘れられそうだと思ってたら、次々と色んな話聞かされて…。最近はまたヨウスケに振り回されてばかり…。もう…うんざりだよ。結局はみんなで私を騙してたんじゃん。…私、そんなに要領よくないよ。そんなに早く頭の切り替えなんて出来ないっ!』




…めちゃくちゃ叫んだ私は、その場から立ち去った。

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