《MUMEI》

――これからおいおい話していきます。

って言っときながら、この日は何も話さなかった。

まず、有理に相談してみようと思った。

「あぁ?知らねぇよ。自分でどうしたいか考えろ」

「……別に、有理に決めてくれなんて言ってない。聞いて欲しかっただけだよ」

むかついてつい強がった。

「…まあ、それくらいならいいかな。オレ、何もできねぇし」

「な、何もできなくなんてないよ!有理はいてくれるだけで十分オレのためになってる」

気のせいかと思ったけど、有理の顔が赤くなったような気がした。

「まぁ、マネージャーには話しても大丈夫なんじゃないか?つーか、もう誰にも隠す必要もないと思う」

照れを隠すように有理は話した。

「でもそしたら有理は?双子っていったら普通は同じ顔ってなるよ」

「……流理が言いたいのはオレの脚のことか……?」

「うん……」

「問題なのはオレ…か」

「問題って訳じゃないけど…。そんなに急ぐことはないよ。まだオレ達には時間あるしさ」

――せっかく有理の代わりに春日有希になったのに、こんなにすぐに春日有希の双子の兄が代わりにやってますなんて言ったら意味ないかもな。

……そう有理に言ったら、有理は楽しそうに笑った。

やっぱり脚のこと、すごく気にしてるんだなと思う。

「有理―…あの、脚のこと…だけど、やっぱり直らないの?」

「もう少ししたら治療が終わる。完全に終わったら、後はたまに検診に通うだけでいいって。………嬉しい?」

「あ…当たり前じゃん!」

嬉しいどころじゃない。
嬉しすぎてどう表現したらいいのかわからない。

…とにかく有理が家に帰ってくるんだ!!

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