《MUMEI》
*仕事*
「!?」

瑠果は思わず右手に握ったフォークを落としかけた。

「な‥何を言っているのだ紫堂‥!?」

「ずっと‥ずっと瑠果が好きやったから──せやからオレ‥こないしてやってきたけど‥‥ホンマは‥アカンかったんかも知れへん」

「紫堂‥お前」

「何も出来んと──命令ばっかしてもうてごめんな」

「し‥」

「瑠果はしっかりしとるから‥オレがいーひんくても大丈夫や」

「何を」

瑠果の声には反応せずに、紫堂は扉に向かう。

「行くな!」

瑠果が紫堂の前に立ち塞がった。

「ばか者っ!」

「!?」

そのあまりの剣幕に、紫堂はビクッと肩を上げた。

瑠果は潤んだ瞳で紫堂を睨み付けるように見つめて言った。

「お前にはこれからまだまだしてもらわなければならん事が山程ある‥。勝手に出て行くなど許さん」

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